アニメ「ミッドナイト・ゴスペル」レビュー:not おバカアニメ but 精神の旅
普段は映画ばかりで、ドラマやアニメはあまり観ないのだが…
この作品はあまりにも凄すぎたのでレビューを残す。
作品情報
タイトル:ミッドナイト・ゴスペル
公開年:2020年
上映時間:約30分×8話
監督:ペンデルトン・ウォード
あらすじ:
「ミッドナイト・ゴスペル」は、壊れた"多元宇宙シミュレーター"で自らの番組を宇宙配信している男クランシーを描いた物語。 リボンという場所にある住み慣れた仮想世界農場を飛び出して、クランシーは他の世界の生き物たちをインタビューするために旅立ちます。 制作は、ペンデルトン・ウォード (「アドベンチャー・タイム」) とダンカン・トラッセル (ポッドキャスト「Duncan Trussell Family Hour (原題)」)。 アニメーションはTitmouseが手がけています。 (Filmarksより)
感想・評価
Netflixオリジナルコンテンツの、約30分×8話からなるアニメ。
何度かチラチラとNetflixのリコメンドに出てきてはいて、過去一瞬だけ再生するも「なんかサウスパーク的なノリの馬鹿アニメかな」と早々に観るのをやめてしまっていた。
とある日、友人の強い推奨をうけて鑑賞。
…とんでもなかった。
まずこのアニメを楽しむためには、事前に以下の前提を知っておかなければならない。
- この作品は、ダンカン・トラッセルというコメディアンが実在する人物たちにインタビューしたポッドキャスト番組の会話を元に構成されている
- それらの会話の内容は薬物依存、禅、瞑想、死…など、非常に哲学的でフシギなものである
上記にピンと来た人であれば、アニメが苦手な人(僕もそうだ)も必ず観るべきだ。
アニメーションはあくまで「オマケ」として、会話にアンテナを向けて欲しい。
1話1話が強烈に含蓄深くパワフルだ。
そしてなんと言っても強烈なのは最終話。
最終話のインタビューイーは、主人公の声優ダンカン・トラッセルの実の母なのだ。
ダンカンの母による瞑想ガイドのシーン。
今まで僕が見聞きしてきたどんな瞑想導入ガイドよりも秀逸で、とても驚いた。
よくいう「心を無にする」とか「呼吸に集中する」とかよりもよっぽどクリティカルで、まるで催眠術のようであった。
そして…
実はダンカンの母は、病により余命がいくばくもない、という酷な現実を抱えている。
(実際に、収録後亡くなられたようだ)
ダンカンは、迫りくる最愛の母の死、その悲しみとどう向き合えばいいのか?と嘆く。
それに対する母の応答は…ぜひ実際に鑑賞して確かめて欲しい。
いまこの記事を書くために、そのシーンを5秒再生しただけで号泣してしまった。
クライマックスのシーン、母と子は星のような姿になる。
もうその頃には感情は極まりに極まって、グチャグチャで涙が止まらない。
そのシーンでめちゃくちゃシビれるのは、滅びゆく母を泣きながら見つめるダンカンもまた、ポロポロと滅びながらすぐ後を追っているのだ。
宇宙から、その全ての時間から見れば、1世代間の時間なんて本当にごく僅かの差であり、一瞬の煌きだ。
その短い命なかで、何を感じ、どれだけの「愛」を残せるか。
ただのお涙頂戴エンドではない。
明日に向かって、生きる意味を本気で考えさせてくれるのだ。
視聴リンク
採点
あえて、映画と同じ枠でレビューする。生涯大切にしたい作品。
★9:度々話題にし続けちゃうかも