映画「メッセージ」レビュー:言語という概念に思いを馳せる深淵なSF
作品情報
タイトル:メッセージ
公開年:2016年
上映時間:116分
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
あらすじ:
突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。 謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。 その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。 (Filmarksより)
感想・評価
ネタバレ無しで感想を語るのは非常に難しいが、トライしたい。
劇中何度もある“回想”のシーンについて。
そのストーリー上の意味も伏線として秀逸ながら、それよりも表現としての見事さに強く感銘を受けた。
触れ合う自然の手触り、母と子の温もり。
人間にとって最も原始的であり深層的であり印象的な記憶というのは確かにそういうものである。
そういうシンプルかつ鮮烈な“回想”から、徐々に言語的で複雑な“回想”に発展していく様は、まさに人間の脳の成長の過程、認識と言語の発展の様を表現しているようで、
それはすなわち…相手に新しい体系的な概念を習得させるプロセスである。
主人公は二次元(文字)と三次元(音声)の複合である人類の言語という体系についての第一人者として、未知なる存在とのコミュニケーション役に任命される。
彼女が選んだ手法は、単語レベルの認識合わせから始めるというものであった。
周りの無知な人たちはその遠回り感に苛立つが、これは人間の言語習得のプロセスについて知見が深い彼女だからこその、極めて合理的・効率的なアプローチであった。
一方で“相手”も、体系の次元こそ違えど、順を追って、同じようなアプローチで、何か高次なものを彼女に伝えようとする。
つまりどんな次元の言語体系であれ、イチから相手に伝える際は「急がば回れ」ということだ。
そのことを、徐々に発展していく“回想”の映像表現によって見事に表現していることに、とてつもなくシビれた。
是非もう一回観たいと思うし、SF好きの全ての人に勧めたい作品。
視聴リンク
採点
この映画の評価は…
★9:度々話題にし続けちゃうかも